ガイド
回数券を売るということ
前払いが資金繰りと再来店に何をするのか、まとめ売りの値付けはどうするのか、そしてソフトウェア会社があまり言わない、研究で確かめられている難点まで。
回数券が実際に変えるもの
回数券は単純です。お客様が複数回分をまとめて、たいていは少し割引された価格で買い、数週間から数か月かけて使っていきます。トリミングなら5回分、洗車・コーティングなら1シーズン、教室なら10回分。
お支払いの瞬間に、三つのことが変わります。
- 作業の前に代金が入ります。車も材料もガソリンも先に自分の財布から出ていく商売なら、これは仕入れができるか待つしかないかの差です。
- 次のご来店がすでに決まっています。まだ4回分を持っているお客様は、隣の店とあなたを比べていません。
- 同時に「借り」も生まれます。ここが忘れられがちです。未使用の回数は売上ではなく負債であり、記録していなければ年度末にいちばん大事な問いに答えられません。代金を受け取って、まだ提供していない分はいくらあるのか。
なぜ前払いだと戻ってくるのか?
一部は単純な経済です。すでに支払っているので、次の一回の限界費用はゼロです。ただしサブスクリプションや前払い契約の研究は、経済的な得だけが理由ではないと示しています。ウォートンのサブスクリプション研究では、顧客の購入増加のおよそ3分の2が、その制度の経済的メリットでは説明できなかったとされ、代わりにコミットメントと習慣の効果が指摘されました。
サンクコストの研究も同じ方向を向いています。先に払ってしまった以上、使ったお金を無駄にしないために人は足を運びやすくなる。バークレーのハース経営大学院の研究者たちは、前払い契約の設計においてまさにこの点を検討しています。
誰も触れないトレードオフ
正直なところを書きます。前払いは都度払いより常に優れている、わけではありません。契約設計の研究は本物の緊張関係を見つけています。前払い契約はより多くの客を集めるが、後払い契約のほうが目標の達成率は高くなる傾向がある、というものです。最後に払う形は「行かなければ」という小さな圧力を保ち続けますが、お金が出てしまうとその圧力は消えます。
現実にはこうなります。回数券はよく売れ、そのあと静かに使われないまま残る。利益のように見えて、実際は受けられなかった4回分を抱えた不満足なお客様です。対処は回数券をやめることではなく、誰かが使うのをやめたときに気づいて、まだ好意が残っているうちに連絡することです。
値付けはどう考えればいいのか?
1回あたりの価格に対して10〜15%の割引が一般的で、まとめ買いを買う気にさせつつ、そもそも売る理由だった利幅を手放さずに済む水準です。計算は分かりやすく。5回で12,000円であって、11,850円ではありません。お客様が頭の中で確かめられない回数券は、信用されない回数券です。
どう決めるにせよ、条件は販売した時点で固定されるべきです。3月に値上げしても、1月に洗車5回を買った人の手元には5回分が残ります。Returnpass が発行時にメニューの内容をパスへ固定するのは、まさにこのためです。
やる価値はあるのか
1990年にハーバード・ビジネス・レビューへ掲載されたReichheldとSasserの研究は、再来店がなぜ利益になるのかについて今も最も明快な答えです。離脱率を5%下げたところ、対象となった企業群で利益は25%から85%増え、自動車整備チェーンでは30%でした。なお、よく繰り返される「25%から95%」は後年の歪曲で、実際の範囲は25%から85%です。
Returnpass での扱い
回数券はお客様の Apple Wallet の中で一回ずつ減り、管理画面には残りの前払い回数が出ます。代金を受け取っていて、まだ提供していない分です。その裏にある台帳は追記のみで書き出せるので、会計担当にこの数字の出どころを聞かれても持ちこたえます。
まとめ売りより特典を渡すほうがお店に合っているなら、スタンプカードをどうぞ。